研究開発
Research and Development最新のレーザーを用いた溶着技術でこれまでできなかった樹脂フィルムの溶着を実現し、新たな付加価値の創出、医療業界をはじめとする社会への貢献を目指します。
フッ素樹脂はマイナス200℃以下の極低温から250℃以上の高温までの広い温度範囲で使用可能な優れた樹脂素材です。
しかしながら、ポリエチレンなど他の樹脂素材よりも融点(ガラス転移点)が高いため、従来の熱板溶着によるシールは困難でした。
当社は、レーザーを利用した溶着技術(注1)によってフッ素樹脂フィルムの溶着を可能とし、フッ素樹脂を素材とするバッグを実現しました。
例えば移植医療分野では生体組織を液体窒素温度(マイナス196℃)で凍結保存する必要があります(注2)。フッ素樹脂を用いた保存バッグは液体窒素温度でも全く脆化せず、樹脂本来の強度、耐衝撃性などの優れた特性を維持します。
こうした温度特性に加えてバリア性、耐食性、耐薬品性、耐候性など優れた特性で医療現場に安全安心の大きなメリットをもたらします。
更にオンサイト型のレーザー溶着機も開発し、バッグのデザイン、作製から封止用の溶着ツールまで、フッ素樹脂バッグシステムをトータルに開発しています。
レーザー溶着技術は、フッ素樹脂以外の樹脂フィルムにも適用可能です。その工程はレーザー光を走査させるプログラミング次第でフレキシブルなデザインを実現します。
レーザーと樹脂素材との組み合わせにより、新たな機能実現の可能性も広がります。
(注1)ヒートシンク式レーザー樹脂溶着法は電気通信大学にて開発された技術で、当社は本技術の実用化を目指す「先端レーザ樹脂溶着技術・推進コンソーシアム」(略称 LAWPコンソーシアム)に参加しています。
(注2)心臓弁、血管、皮膚組織などは液体窒素雰囲気での保存が行われています。
公的事業採択実績
当社の研究開発事業は多くの公的事業に採択されています。
●科学技術振興機構研究成果最適展開支援プログラム(ASTEP)
『あらゆる樹脂袋に適用可能な革新的ピール性制御技術の開発』
●平成24年度補正予算ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金
『先端医療現場で使用する滅菌樹脂袋用レーザー溶着機の試作』
●平成25年度おおさか地域創造ファンド
『赤外線レーザーを利用したPS細胞組織凍結保存用滅菌樹脂袋の製作技術開発』
●平成27年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)
『凍結保存バッグの封口装置』
●平成27年度医療機器研究開発支援事業補助金(平成29年度までの3カ年度)
『生体組織の極低温凍結保存用バッグの製造品質向上手法の開発』
●平成26年度補正ものづくり・商業・サービス革新補助金
『生体組織凍結保存用注入出ポート付きバッグの作製技術の開発』
●平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)
『凍結保存バッグの封口装置』
●平成28年度補正革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金
『再生医療・細胞培養に有用な極低温対応バッグの量産化技術の開発』
特許について
当社では、レーザーを利用した溶着技術および製造装置において特許を取得しています。
知的財産権取得状況
- ●凍結保存用バッグの製造装置(特許第6132442号)
- ●凍結保存用バッグの封口装置(特許第5988111号)
- ●凍結保存用バッグの封口装置(特許第6182246号)
- ●凍結保存用バッグとその組織の封入方法第(特許第6230575 号)
- ●レーザー溶着装置とレーザー溶着方法第(特許第6718172 号)
- ●SEALING APPARATUS FOR CRYOPRESERVATION BAG
U.S. Patent(US 10.435.189 B2)
European Patent(EP 3181463)
東大病院との共同研究
組織・細胞移植医療分野においては、医療用途および医療発展のための研究用途で、細胞レベルで半永久的に生きた状態で保存するために保存組織を液体窒素の温度(マイナス196℃)で凍結保存しています。
貴重な生体組織を清潔度を保持したまま長期間凍結保存するために特殊な凍結保存用の袋が必要です。この要求を満たすため、現在上田製袋と東京大学医学部附属病院組織バンクは「生体組織凍結保存用樹脂バッグおよび封止装置の実用化研究」を行っています。